涼宮ハルヒとスニーカー大賞(涼宮ハルヒの憂鬱非公式ファンサイト)

涼宮ハルヒとスニーカー大賞

ライターが執筆する「ちょっと硬めの」ハルヒ論。「俺だって書ける!!」って方は、ぜひお問い合わせを(笑)。

涼宮ハルヒとスニーカー大賞

今回は『涼宮ハルヒの憂鬱』が受賞したライトノベル系文学賞の老舗「角川スニーカー大賞」について考察する。

 2006年8月現在、第12回を数えたスニーカー大賞。「大賞」を標榜しているこの賞であるが、発表されている第10回までで、『大賞』を受賞した作品は意外にもわずか3作しかない。

 その三作品とは、第2回の『ジェノサイドエンジェル~叛逆の神々~』(吉田直)、第3回の『神々の黄昏 ラグナロク』(安井健太郎)、そして第8回の『涼宮ハルヒの憂鬱』(谷川流)である。

『ジェノサイドエンジェル』の吉田直は『トリニティ・ブラッド』でブレイク。その他『ブシロード』などの企画が立ち上がっていたようだが、2004年に突然逝去してしまった。続編の永遠に出る事のない今でも根強いファンを持つ実力派の作家である。『ラグナロク』はそのままシリーズ化され、現在外伝含めて19冊が刊行され、コミック化もされている。スニーカー文庫を代表する作品の一つである。

 この二作品を含めて第7回までの金賞や奨励賞を受賞した作品の多くは正統派SFやファンタジー路線の作品であり、学園モノの多くは姉妹賞である角川学園小説大賞(主な受賞者は『NHKへようこそ!』の滝本竜彦や、『アンダカの怪造学』の日日日など)に任されていた。

第8回『涼宮ハルヒの憂鬱』の大賞受賞

 それが明らかに変化したのが第8回『涼宮ハルヒの憂鬱』の大賞受賞だった。正統派学園モノにSFを流し込む本作を皮切りに、続く第9回で優秀賞に『タイピングハイ!』(長森浩平)『タマラセ』(六塚光)、奨励賞に『燐Ren 刻のナイフと空色のミライ』(水口敬文)、第10回でも『マキゾエホリック』(東亮太)を送り出すなど、明らかに学園モノを意識した賞へとシフトした。ここにはゲームやインターネットの普及によるライトノベルの読者層や著者の変化など様々な要素が考えられるが、やはり『涼宮ハルヒの憂鬱』という作品のもたらしたインパクトが大きい。

 ちなみに、『涼宮ハルヒシリーズ』の中でSF要素と淡い恋愛の部分に惹かれた方には『燐』を、荒唐無稽な設定や徹底した記号論に賛同した方には『マキゾエホリック』を、萌え要素とテンションを心地よく感じた方には『タイピングハイ!』をそれぞれおすすめする。

 少し俯瞰して考えれば先日リメイクされた『時をかける少女』(筒井康隆)のように、青春学園モノにSF要素を流し込み、荒唐無稽な設定で料理する物語は角川書店にとって原点回帰と呼べるものであったかもしれない。

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執筆ライター 淡島代沢

【プロフィール・実績など】

某大手出版社で書籍編集者を長く経験。エンタメ系がフィールド。経済や一般生活なことまでオールジャンルに対応できます。